辛いのではなく、つらい。

2005/12/31

SDG三国伝BBW

「先生、そろそろ視察のお時間ですわ」
「わかりました」

あの日からずっと、先生は判で押したような日々を送って、
内政、外交、軍備、翔の、およそ重要な政治はすべて
ご自身でなさる、お忙しい日常です。

そして、毎日かならず、龍帝剣をお祀りしている玉座に
ご挨拶をなさいます。誰よりも長い時間。
まるで、劉備さまが生きていらっしゃるかの如くに。
気丈にお振る舞いになっても、
先生のお姿に添う影には、いつまでも、お悲しみが隠れもありません。
お傍で見て居て辛いのですが、
お悲しみだけではなく、先生には確信がおありのようなのです。
必ず、三侯の魂は蘇ると。

「先生は、劉備さまがお帰りになるとお考えなのですか?」
一度、聞いてみました。
曖昧な微笑をお作りになって、
「其の時は、本当にお別れしなければならない時かもしれませんが」
と、肯定とも否定ともつかない、
謎掛けのようなことをおっしゃいました。

おひい様にお話してみても
「月っちゃん、頭のいい人の考えることは、
紙一重ってやつだから、放っといたらいいのよ。
劉備なきあとの翔は、あたしたちで守っていかなきゃ!
で…華天楼の応用技を編み出してるんだけど、ちょっと見てくれない? 離れて、ね」
と、相変わらず豪胆なことをおっしゃるばかりです。

確かに、ご遺体をこの眼で確認したわけではありません。

何度も危ない大戦を生き抜いてきた劉備さまです、
もしかしたら、ある日ひょっこりと、
「やあ、みんな! 元気だったか?」
と、あの笑顔でお戻りになるのかも知れないと、
思わないでもありません。

でも、父の発明した恐ろしい液体火薬を積んだ
あの死の船を、一体どういう御力か測り知れないながらも、
おそらくは御命と引き換えるぐらいの奇蹟で、
紅蓮の炎を操るあの方とご一緒に、
どこかへ遣っておしまいになったのです。

天からは龍帝剣だけが戻り、どんなに待っても、お二人とも
地上にはお戻りになりませんでした。

お戻りになるなら、龍帝剣と相前後して、
そのような形でなければ、辻褄が合わない気がします。
先生は、どうしてそんなにも信じて待っておいでなのでしょう。
預言の書に、そのようにはっきりと書いてあるのでしょうか。

けれども、お信じになってはいても、
ときどき夜釣りをしながら、瞳に涙を浮かべておいでの事を、
わたしは知っています。

(あの人は、私や皆の心の中に生きている。 そして、いつか必ず、本当に帰るのだ)
先生の瞳の奥には、いつだって、そう書いてあるのです。

わたしは先生を心からお慕いしているつもりですから、
見誤っているとは思えません。

ですから。

もし本当に生きておいでなら、

一日も早く、先生のお傍にお帰りください。

ひとりの翔の民の切なる願いを、お聞き届けください。

わたしたちの、
先生の、
かけがえのない王さま。



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