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3世紀のおはなし目次 (いまここ) |>> SDG三国伝のお話  | >> 劉公叔の物語 (21世紀のパラレル小説) 【目次↓】5000字程度。時々適当に繋がっている読み切り。微糖なおやぢ攻め。(   *印は微えろ ) 2019.1...

3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋(十一)

(召單……?)  関平は、外套を纏い小さな荷物を抱えて路の端を南門へ向かって歩く女が、脇をゆき過ぎてゆく姿をみとめて振り返った。  彼女が持つ小さな荷物の形状が、庶民がよく無造作に担いでいる単純な丸い形ではなく、下部が丸く上部が細長く、しかも身体の前で大事そうに抱えているよ...

3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋(十)

  成都の天気は変わりやすい。   さきほど嚔の咆哮を放った成都の主は、蓋碗を卓に置いて立ち上がり、日差しが薄くなった廊へ歩を進めて 「曇ってきたようじゃな。道理でな」 甍の上の天を仰いで呟いた。 「この天候こそが成都を天府たらしめていると思えば、ありがたきことでご...

3世紀被害譚SS 三世紀ss

先主廟雨情

はや、一千と何百回になるかのう。 この日が巡り来たるのはな。 その方らも存じおりの事であろうが、あの時、孔明はまだ五十と四歳であったのだぞ。 若すぎようが。 当時、髪に混じり増えゆく白いものが章武三年以降の労苦を物語っておったが、その白いものすら儂の眼には清げに映り、...

3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋(九)

 成都の人気茶楼「啼春心」の昼下がりの楽屋で、二人の話し声がする。 「皇叔さまと軍師さまにあやかって、まさかこの茶楼にも三顧の礼を受ける者が出ようとはね。今日は珍しく晴れてるし、お天道様どうした風の吹き回しなのかねえ」  柱に寄りかかって立つ女楼主の視線の先には、琵琶の楽...

3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋(八)

三将軍、つまり張飛将軍の名は殊のほか有効だった。 張府の二文字で、女楼主の眉間の皺がたちまちに消え失せて態度が軟化したのが、関平にも従者にも分かるほどだった。 「張将軍のゆかりの御仁ならば」  そこで楼主はクスリと笑ってえくぼを作り 「少なくとも、裏表のないお人でしょ...

3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋(七)

 成都の人気茶楼「啼春心」は、その日も賑わっていた。    古い豪商の家を修築した趣で敷地が広く、ゆったりとしている。    門の前には屋台が並び 「券のお求めは中でございます。ようこそ、いらっしゃいませー」   と、茶楼の切符売りが声を張っている。    相変わら...

3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋(六)

「見事じゃのう、相も変わらず」 「お役に立ちますれば」  卓上の龍の手跡を褒め、そのまましばらく眺めてから 「貰うてもよいかの」  手本の用事が済んだあとに愛蔵したい旨を小聲で龍に問うた。  彼が聞かずもがなのことを問いかけるので 「お心のままに」  龍はあかる...

3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋(五)

「お召しにより罷り越しました」 「おお。孔明」  彼は案上に落としていた視線をあげて我が龍の端正な姿を廊に認めるや「待ちかねたぞ」を言うことをやめ 「近う」 と、いつもの何気ない口調で短く命じて龍を招いた。  羽の扇を横たえて一礼すると白い賢者は案の傍へ静かに近...

3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋(四)

 昨夜まで月が薄雲をまとう風情の、益州らしい天気であったのにこの日は晴天であった。    まばゆい朝日と青みを帯びてくる空の下、張将軍の邸の庭では二人の若者が剣を交えている。  百合ほどの熱戦で両者譲らず、二人が離れて着地して再び剣を構えたのを機に 「見事!」  の声が...

3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋(三)

 往時の関将軍と歌姫のことをひとくちに若い戀だったと表すことはたやすいし、わかりやすい。  しかし実際はそう簡単なことではなかったのかも知れない。  廿有余年も前に古都洛陽では一人の歌姫が宮中を騒がせていた。  彼女が歌い舞う姿を見て心を奪われぬ者などないといえた。 ...