「っかぁーっ! うめ。うめぇなあ、これ。何処の何ていう酒っスか?
……聞いても酔っ払っちまうと、忘れちまうんスけど。
俺バカだし」
ある冬の夜、お招きへのお礼として持参した一壺の古酒に、
舌鼓を打ってから、ガハハと、虎髯を逆立てた中で、
ご主君の末弟の将軍は、上機嫌で豪快に笑った。
この将軍とわたしは、何となくウマが合う。
こうして時々、お邸にお招きを受けるのだが、
痛飲した後は、将軍はいつも先にお休みになってしまい、
「軍師どのも、好きなように、適当に休んでくれい」と、
お構いなしなで、わたしも帰宅して悠悠ねむれるので、
このかたのお招きは、堅苦しくなくていい。
それに、張家の酒の肴は、繁盛している居酒屋よりも
ずっと気が利いている。
将軍が若い頃、肉を商っていたらしきことは
おそらく本当なのだろう、肉料理が特に美味い。
糟糠の妻であるという奥方は、
いまだに厨房を取り仕切っている料理好きと仄聞するが、
将軍は、この美味い飯にも支えられて
武勇を誇ってきたともいえよう。
その奥方にも、将軍はわたしと呑むと
ほどよく酔って機嫌よく眠ると、
評判がよいらしく、張家には歓迎されているようである。
「兄者たちと飲むのも、そりゃ美味いけどな、
呑み過ぎるなって釘さされながらだからよう、
家で呑みなおして、かみさんに煩がられる。
軍師どのは、俺に説教したりしないからな、余計ウマイんだろな」
「左様、呑んでいる時の説教ほど、無粋なものはござらぬ」
「さすが軍師! 分かってるゥだゼ、さ、もう一杯いこうぜ」
ぽんと、弱い力加減で肩をひとつたたき、
杯にダバダバと美酒を注ぎ足してくださる。
本当に、飾らない気さくなおかただ。
ご主君にお仕えして、あるいは最初にある程度理解できたのは
この将軍の人柄かもしれない。
「いやー、軍師は頭もいいが、呑みっぷりもいい。
俺様に毎日でも付き合ってくれる奴なんて、
軍中でもそうそう居ないからよォ」
「はは、将軍は酒豪すぎます。天下広しといえど、
毎日お付き合いできる者など、何人居りましょうや」
「その酒豪に付き合ってるんだから、アンタも相当だぜ」
ひく、と、ひとつ咽喉を鳴らして、
椀を取ったような手つきをしながら、
「で、軍師どのは、でかいのとペッタンコと、どっちが好きだ?」
……酒がこの大柄な體を一巡したか、
上機嫌になられた時の決まった戯れをおっしゃる。
ごほん。そのぅ……。おなごの、乳の話だ。
「わたしはーそのー・・・ですな、そっちはあんまり」
「なんだよツマンネェな。尻の方か? 俺様は」
「存じておりますよ、でかい方」
「然り! でぇ。軍師どのはあ?」
「わたしはその……ですな、膝枕がいい塩梅の女ならそれで」
「うへぇ、そっちの方かよ。すみにおけんなあ」
それでお気が済まれたのか、ぎょろりと酔眼をめぐらせて、
「こんな寒い日はよう、思い出すぜ、隆中の雪の日」
少し遠い目をなさった。
「孔明の奴を、ご主君とお迎えに行かれた日のことですな」
空になった杯に、酒を注ぎ足して差し上げる。
やれやれ、ご主君はもちろんだが、
この将軍も、髯の将軍も、胆の将軍も、結局は
ご主君を語る序に、おぬしの事を語るのだよ。知らんだろ。
「あの日は吹雪だった。吹雪をおしてでも行くっていう兄者を、
気が狂ったかと思ったぜ」
「ご執心でしたんですな」
「『でした』じゃねぇス。『です』でス」
酔っている割に、正確な表現に訂正されてしまった。
遠まわしに言ってみたつもりなのだが。
「こんな寒い日はよぉ、酒に限るっつーのに、
多分な、兄者は水殿と、熱い茶でも飲みながら、
夜もすがら話し合ってるってトコなんスよ。
一体、俺と兄貴みたいに若い頃の無茶な思い出があるわけでもなし、
何を毎日そんなに喋ることがあるんだか、
あれから今まで、よくシラフでそんなことしてられるわい。
もう慣れたけどな、なんでなのかは、いまだにワカンネエ」
甘辛い肉を頑丈そうな歯で粉砕しながら、
杯をぐいと干し、
「あれは、何なんだろうな。俺達を差し置いてまで、
兄者があれほど片時も離さないってことはだ、
もう俺らにとっても大事なお人と思わざるを得んというか、
実際、軍師殿とおんなじぐらい、あんな風に凄えんだし。
……ってな、今は納得しちまってるような所もあるにはあるんだが、
いまだに、よくワカンネエ」
肉と一緒に、疑問と酔いを咀嚼しているような具合である。
きっと、当人同士ですら、
はっきりとは分かっていないのだろうから、
この豪快を人の形に成したような将軍にとっては、
尚更であろう。
「酔っ払っても居ねぇのにだ、
それからもう狭い邸に居候してるわけでもないのに、
メシはいいとして、いまだに同じ寝台で眠りこむってぇ、
ありゃ一体どんな訳なのか。父と子ってカンジか?」
首をかしげておいでだ。
「兄者はな、ああいう堅い御方だから、若い頃ですら、
一緒に女遊びなんて一度だってしたことないけどな、
ここだけの話、ありゃ、ペッタンコなのが好きでいなさるに違いねぇ」
おや、また乳のお話か。酔われたのだな。
天下の機密を握っているように声を潜めて
……いや、充分に大声なのだが……、
ぎょろりと巨きな両の眼を光らせた。
おおお、虎のようだよ。
しかし将軍、あまり「ぺったんこ」を連呼しないでいただけまいか。
その大声では、奥方にまで聞こえてしまう。
わたしが、何か下品なことでも吹き込んでいるように
思われては、今後、お招きに差し支えまいか。
噂が本当なら、この将軍をすっかり尻に敷いてしまっている、
猛妻でおいでなのだから。
「義姉上がどうだったとか、そんな無礼なこと思ってるんじゃねぇスよ、
奥方として家柄とか人柄とか、そういう道徳的? とかっていう奴を
抜きにした場合だがよ、きっとペッタンコなのがお好みなんだと俺様は睨んでる。
あんなに四六時中一緒にいたらだよ、
うっかり触っちまうことだって無いはずねぇだろ。
……それでよぉ、この歳になっちまっても、かみさんと同衾するのに
ナニもせずに寝こけるってのは、やっぱりイカンのではないかと思うと、
いろいろと億劫じゃねえか……
たまにはよお、柔らけぇアンナトコや、
すべすべのコンナトコを撫で回したりしながら
寝入っちまうっての、シてみてぇ訳だよ俺様だって。
と、まだ軍師殿は若ぇんだから、この辺の気分は
分からんだろうけどよ、いや天才なら分かるのかな、ま、いいやな。
ありゃ、隣で寝てても気にならんなんて、
そんな程度じゃねえんじゃねえか?
むしろ、寝てて欲しいぐらい、とか、
あわよくばヤっちまってるんじゃねえかその、
撫でたりしながらって奴を。
しかもだ、かみさんでも妾でもねぇんだから、
ナニせねばならんわけではなし。
五十がらみの男の寝所としてだ、
っかー、實に気楽で結構じゃねぇか。
いや別に、俺様が兄者の水殿を撫で回したいなんて
思ってるわきゃねぇだろ。
そんな事、ちぃとでも思ってみろ。
頭のいいやりかたで、軍律に照らして処断されちまうぜきっと。
俺バカだから、その日の夕方には、まんまと罠に嵌ってあの世行きだ。
……いっぺんに酔いが醒めそうだぜ……。
何の話だったっけか? そうか、ナニの話か。
ナニしなくてよし、ペッタンコでまさに兄者のお好み!
そうでもなければでスよ、、何を好き好んで、
いまだにああも、毎晩のように。なあ。
いや……? 案外、兄者の水の軍師殿は、一人で眠れないとか、
あっ、そうだ、夜、一人で厠に行けないとかな!
だとしたら、ちょっと可愛いじゃねぇスか」
ガハハとまたお笑いになる。
おお、ひやりとした。
将軍は酔った勢いの思いつきか冗談のつもりとお察しするが、
……バカどころか、この将軍はときどき、無意識に鋭い。
仮に盛夏であったとしても、あの君臣がまさか肌脱ぎになって
眠っているとは考えられないし、實際どうかは別として、
あの君子然としたご主君に、断袖の癖があるなどということは更になかろうが、
よしんば、そのようなご嗜好があったとしてもだ、
国を傾けるような愚を招くほど溺れておしまいになる性質には見えない。
一人で眠れない。
当たらずとも遠からずなのではないか。
あくまでわたしの憶測だが、
おぬしはご主君のお傍でないと、眠れない。
はじめは、ご主君の側の必要だったのかも知れんが、
おそらく今は、おぬしの側の必要で、
枕を並べて眠っているのではないのか。
もちろん、ご主君が「撫で」たりしているのかどうかは
与り知らんことだし、知ろうとも思わんが。
ご主君の股肱の将たちは、人の良い者ばかりだ。
わたしのように、醒めた目で、ご主君とおぬしを
見ている者など、居ないのではないか。
結局、おぬしが一番、君寵をほしいままにしていることを、
認めて、皆なんとなく眩しく見守ってしまっている。
本当のところ、わたしには眩しすぎて、
いまだに目の遣り場に困っておる。
とりあえずだ、軍議でご主君と無言で見つめ合うな。
いや、見つめ合っても構わんから、何か発言しろ。間がもたん。
周りの者が、固唾を呑んでしまっているのを、
おぬし、わかっているのか一体。
わたしより、ずっと賢いくせに。この馬鹿野郎。
せっかく、心地よく酔うていたのにだぞ。
……聞いても酔っ払っちまうと、忘れちまうんスけど。
俺バカだし」
ある冬の夜、お招きへのお礼として持参した一壺の古酒に、
舌鼓を打ってから、ガハハと、虎髯を逆立てた中で、
ご主君の末弟の将軍は、上機嫌で豪快に笑った。
この将軍とわたしは、何となくウマが合う。
こうして時々、お邸にお招きを受けるのだが、
痛飲した後は、将軍はいつも先にお休みになってしまい、
「軍師どのも、好きなように、適当に休んでくれい」と、
お構いなしなで、わたしも帰宅して悠悠ねむれるので、
このかたのお招きは、堅苦しくなくていい。
それに、張家の酒の肴は、繁盛している居酒屋よりも
ずっと気が利いている。
将軍が若い頃、肉を商っていたらしきことは
おそらく本当なのだろう、肉料理が特に美味い。
糟糠の妻であるという奥方は、
いまだに厨房を取り仕切っている料理好きと仄聞するが、
将軍は、この美味い飯にも支えられて
武勇を誇ってきたともいえよう。
その奥方にも、将軍はわたしと呑むと
ほどよく酔って機嫌よく眠ると、
評判がよいらしく、張家には歓迎されているようである。
「兄者たちと飲むのも、そりゃ美味いけどな、
呑み過ぎるなって釘さされながらだからよう、
家で呑みなおして、かみさんに煩がられる。
軍師どのは、俺に説教したりしないからな、余計ウマイんだろな」
「左様、呑んでいる時の説教ほど、無粋なものはござらぬ」
「さすが軍師! 分かってるゥだゼ、さ、もう一杯いこうぜ」
ぽんと、弱い力加減で肩をひとつたたき、
杯にダバダバと美酒を注ぎ足してくださる。
本当に、飾らない気さくなおかただ。
ご主君にお仕えして、あるいは最初にある程度理解できたのは
この将軍の人柄かもしれない。
「いやー、軍師は頭もいいが、呑みっぷりもいい。
俺様に毎日でも付き合ってくれる奴なんて、
軍中でもそうそう居ないからよォ」
「はは、将軍は酒豪すぎます。天下広しといえど、
毎日お付き合いできる者など、何人居りましょうや」
「その酒豪に付き合ってるんだから、アンタも相当だぜ」
ひく、と、ひとつ咽喉を鳴らして、
椀を取ったような手つきをしながら、
「で、軍師どのは、でかいのとペッタンコと、どっちが好きだ?」
……酒がこの大柄な體を一巡したか、
上機嫌になられた時の決まった戯れをおっしゃる。
ごほん。そのぅ……。おなごの、乳の話だ。
「わたしはーそのー・・・ですな、そっちはあんまり」
「なんだよツマンネェな。尻の方か? 俺様は」
「存じておりますよ、でかい方」
「然り! でぇ。軍師どのはあ?」
「わたしはその……ですな、膝枕がいい塩梅の女ならそれで」
「うへぇ、そっちの方かよ。すみにおけんなあ」
それでお気が済まれたのか、ぎょろりと酔眼をめぐらせて、
「こんな寒い日はよう、思い出すぜ、隆中の雪の日」
少し遠い目をなさった。
「孔明の奴を、ご主君とお迎えに行かれた日のことですな」
空になった杯に、酒を注ぎ足して差し上げる。
やれやれ、ご主君はもちろんだが、
この将軍も、髯の将軍も、胆の将軍も、結局は
ご主君を語る序に、おぬしの事を語るのだよ。知らんだろ。
「あの日は吹雪だった。吹雪をおしてでも行くっていう兄者を、
気が狂ったかと思ったぜ」
「ご執心でしたんですな」
「『でした』じゃねぇス。『です』でス」
酔っている割に、正確な表現に訂正されてしまった。
遠まわしに言ってみたつもりなのだが。
「こんな寒い日はよぉ、酒に限るっつーのに、
多分な、兄者は水殿と、熱い茶でも飲みながら、
夜もすがら話し合ってるってトコなんスよ。
一体、俺と兄貴みたいに若い頃の無茶な思い出があるわけでもなし、
何を毎日そんなに喋ることがあるんだか、
あれから今まで、よくシラフでそんなことしてられるわい。
もう慣れたけどな、なんでなのかは、いまだにワカンネエ」
甘辛い肉を頑丈そうな歯で粉砕しながら、
杯をぐいと干し、
「あれは、何なんだろうな。俺達を差し置いてまで、
兄者があれほど片時も離さないってことはだ、
もう俺らにとっても大事なお人と思わざるを得んというか、
実際、軍師殿とおんなじぐらい、あんな風に凄えんだし。
……ってな、今は納得しちまってるような所もあるにはあるんだが、
いまだに、よくワカンネエ」
肉と一緒に、疑問と酔いを咀嚼しているような具合である。
きっと、当人同士ですら、
はっきりとは分かっていないのだろうから、
この豪快を人の形に成したような将軍にとっては、
尚更であろう。
「酔っ払っても居ねぇのにだ、
それからもう狭い邸に居候してるわけでもないのに、
メシはいいとして、いまだに同じ寝台で眠りこむってぇ、
ありゃ一体どんな訳なのか。父と子ってカンジか?」
首をかしげておいでだ。
「兄者はな、ああいう堅い御方だから、若い頃ですら、
一緒に女遊びなんて一度だってしたことないけどな、
ここだけの話、ありゃ、ペッタンコなのが好きでいなさるに違いねぇ」
おや、また乳のお話か。酔われたのだな。
天下の機密を握っているように声を潜めて
……いや、充分に大声なのだが……、
ぎょろりと巨きな両の眼を光らせた。
おおお、虎のようだよ。
しかし将軍、あまり「ぺったんこ」を連呼しないでいただけまいか。
その大声では、奥方にまで聞こえてしまう。
わたしが、何か下品なことでも吹き込んでいるように
思われては、今後、お招きに差し支えまいか。
噂が本当なら、この将軍をすっかり尻に敷いてしまっている、
猛妻でおいでなのだから。
「義姉上がどうだったとか、そんな無礼なこと思ってるんじゃねぇスよ、
奥方として家柄とか人柄とか、そういう道徳的? とかっていう奴を
抜きにした場合だがよ、きっとペッタンコなのがお好みなんだと俺様は睨んでる。
あんなに四六時中一緒にいたらだよ、
うっかり触っちまうことだって無いはずねぇだろ。
……それでよぉ、この歳になっちまっても、かみさんと同衾するのに
ナニもせずに寝こけるってのは、やっぱりイカンのではないかと思うと、
いろいろと億劫じゃねえか……
たまにはよお、柔らけぇアンナトコや、
すべすべのコンナトコを撫で回したりしながら
寝入っちまうっての、シてみてぇ訳だよ俺様だって。
と、まだ軍師殿は若ぇんだから、この辺の気分は
分からんだろうけどよ、いや天才なら分かるのかな、ま、いいやな。
ありゃ、隣で寝てても気にならんなんて、
そんな程度じゃねえんじゃねえか?
むしろ、寝てて欲しいぐらい、とか、
あわよくばヤっちまってるんじゃねえかその、
撫でたりしながらって奴を。
しかもだ、かみさんでも妾でもねぇんだから、
ナニせねばならんわけではなし。
五十がらみの男の寝所としてだ、
っかー、實に気楽で結構じゃねぇか。
いや別に、俺様が兄者の水殿を撫で回したいなんて
思ってるわきゃねぇだろ。
そんな事、ちぃとでも思ってみろ。
頭のいいやりかたで、軍律に照らして処断されちまうぜきっと。
俺バカだから、その日の夕方には、まんまと罠に嵌ってあの世行きだ。
……いっぺんに酔いが醒めそうだぜ……。
何の話だったっけか? そうか、ナニの話か。
ナニしなくてよし、ペッタンコでまさに兄者のお好み!
そうでもなければでスよ、、何を好き好んで、
いまだにああも、毎晩のように。なあ。
いや……? 案外、兄者の水の軍師殿は、一人で眠れないとか、
あっ、そうだ、夜、一人で厠に行けないとかな!
だとしたら、ちょっと可愛いじゃねぇスか」
ガハハとまたお笑いになる。
おお、ひやりとした。
将軍は酔った勢いの思いつきか冗談のつもりとお察しするが、
……バカどころか、この将軍はときどき、無意識に鋭い。
仮に盛夏であったとしても、あの君臣がまさか肌脱ぎになって
眠っているとは考えられないし、實際どうかは別として、
あの君子然としたご主君に、断袖の癖があるなどということは更になかろうが、
よしんば、そのようなご嗜好があったとしてもだ、
国を傾けるような愚を招くほど溺れておしまいになる性質には見えない。
一人で眠れない。
当たらずとも遠からずなのではないか。
あくまでわたしの憶測だが、
おぬしはご主君のお傍でないと、眠れない。
はじめは、ご主君の側の必要だったのかも知れんが、
おそらく今は、おぬしの側の必要で、
枕を並べて眠っているのではないのか。
もちろん、ご主君が「撫で」たりしているのかどうかは
与り知らんことだし、知ろうとも思わんが。
ご主君の股肱の将たちは、人の良い者ばかりだ。
わたしのように、醒めた目で、ご主君とおぬしを
見ている者など、居ないのではないか。
結局、おぬしが一番、君寵をほしいままにしていることを、
認めて、皆なんとなく眩しく見守ってしまっている。
本当のところ、わたしには眩しすぎて、
いまだに目の遣り場に困っておる。
とりあえずだ、軍議でご主君と無言で見つめ合うな。
いや、見つめ合っても構わんから、何か発言しろ。間がもたん。
周りの者が、固唾を呑んでしまっているのを、
おぬし、わかっているのか一体。
わたしより、ずっと賢いくせに。この馬鹿野郎。
せっかく、心地よく酔うていたのにだぞ。