勸兄更盡一杯酒 (あににすすむ さらにつくせいっぱいのさけ)

2009/09/21

3世紀被害譚SS

おお三弟よ、留守居ご苦労であったな、
なになに、兄者との約束を守って、禁酒したとな、
それは殊勝じゃ、でかしたの、今宵は大いに飲もうではないか。

む、何じゃ、孔明殿?
お元気であったぞ。
いやこのたびの事、皆で怪しんだとおり、罠であったわ。

あの男、まるで絵から抜け出てきたような、
噂以上の美丈夫であったが、
あのような姑息な手段を用いようとするとは、
わしから言わせれば、まだまだ小童じゃ。

兄者はほれ、このようなお方じゃから、
卑怯な企みを信じようともなさらず、
それは堂々とお振る舞いになって、
わしは手に汗握りながらも、なんとも鼻が高かったわい。

む?何?そのことはよい?
孔明殿?
お元気であったぞ。
言うたではないか。
久々の酒で、もう酔いが回ったのか。

ぬ?
……お前、あいかわらず兄者のことは耳が早いのぅ。
あちらを発つときのことか。
それはだな、ここのところ見忘れていたのでな。

いやそのぅ、つまり何だ、
名残惜しかったのであろう、兄者が、孔明殿を、
なかなか離そうとならさらなかったのでな。

これ、そうずばりと言うな。
思い出すではないか。

どんな風……って……お前。
それは、ほれ、見慣れた、あんな具合じゃ。
ちと、面映ゆいぐらいであったのは事実だがな。

それから?
それからとは、何だ。
手を振り合って、別れて、こうして帰還して、酒を飲んでおる。

な……っ
ばかを申せ、何を言っておる。

なに、じれったい だと?
何がじれったいのだ。

むぉ?
いま何といった。
今一度いってみよ。

あ……。
兄者も孔明殿も、天下に名を馳せる大丈夫ではないか、

く……ちびる、などかわし合うて、どうなるというのだ。

どうもならんが?

そのほうが?

いっそ?

気が?

楽になるのではないか

じゃ……と……


わしが酔っているのか、わしの耳がおかしいのか。
いや、お前がやはり酔っ払っているのだろう。

兄者、一献召されよ。

居眠っておられず、何とか言うてくだされ、兄者。