3世紀中編 天府南門橋

天府南門橋 廿参

「そうじゃ。張府にの。遣いを頼む」 翌朝の書房で、彼は傍らの侍従に命じた。 「かしこまりました。……して御用の向きは」 「うむ、褒美の銀をな」 まさか「昨夜、張府の招宴に応じて出かけた」とは言えぬので、 彼は一旦、言葉を濁した。 しかし、その濁しを侍従に気取られぬように、 いつも...

漢昭烈 忌辰紀念2025(総集編)

※ 音量注意 PCだと最初の画面横伸びしてますが大丈夫です 今年の見どころは宮姐の美人軍師(ボソ  毎年恒例のファン活動の総集編です (日本語版) スマホ推奨です (PCだと粗くなるかも)

襄陽秋水

襄陽秋水 (完)

 ──御心の中には、深きお嘆きと……お悲しみが…… 龍は、日ごろ限りなき君恩に浴し、心が翳る時ですらも、彼と共にありさえすれば生きられるという実感に、たびたび救われている。 それは彼が、天与の底なしの懐の深さを備えているうえに、彼の天性が人を活かすことに長けており、そして彼の人柄...

三世紀ss 襄陽秋水

襄陽秋水(九)

彼は、龍が奏でる琴の音色に耳を傾け、心を洗うていた。 雨が上がってからそぞろ歩きながら、龐林の館へ戻り、衣を改めて夜の餐に与った後、久方ぶりに琴の聲を龍に所望したのである。 「……どのような曲を、弾じましょう」 龍の問いかけに、彼はおっとりと応じる。 「そうじゃな。……懐かしいよ...

うをとみづ3世紀SS 三世紀ss 襄陽秋水

襄陽秋水(八)

興平が建安に改元されてから数年後、彼は帝に拝謁する機会を得た。   母から、二言目には漢室漢室と、まるで我が家の事のように言い聞かされて育った彼は、その「漢室」を体現した実在の帝の御姿を仰ぎ見て、その御方がほんの十七、八の貴公子であることに軽く驚いた。   御歳の頃は耳に入っては...

三世紀ss

迢迢秋風至(ちょうちょうと あきかぜいたる)

 「言うことをお聞き。乖 (良い子や) 」 秋風が、すぐ背後から初老の男の優しげな声を運んできたので、私は思わず振り向いてしまいました。 私は、乖(かい)と呼びかけられる年齢には、もはや程遠いというのに。 私の目には、小さな子を抱き上げた男の背中が映ります。 分かりきっているのに...

三世紀ss 襄陽秋水

襄陽秋水(七)

  ほのぼのと語らいながら彼らが茶を喫していると、 この二階へと階段をのぼる足音が聞こえてきた。 足音は、会話を重ねながら、斜め後ろの角の卓の方へ移動して 「小二 (シァオァル) 、いつもので頼む」 「はい、お酒と、花生、抄手と、燙青菜」 「それと、蒸栗、な」 「あい、合点です。...

思蜀樂

思蜀樂 2024.04.24  漢昭烈没後1801年紀念作品 上高宮書画坊 × 王道魚水製作委員会

3世紀中編 襄陽秋水

襄陽秋水(六)

「お待たせいたしました。蒸栗でございます………」 店の者は、長方形の盆を捧げて二階へ上がって来、 まだ客の居ない卓に盆を置くと、箸や匙、鋏から小皿を並べて、 深めの大皿を彼らの卓の中央に据えて湯を注ぎ、 その上に蒸籠を乗せた。 小鎮の鄙びた茶店らしからぬ、保温の工夫が好ましい。 ...

三世紀ss

天府雪景

  「お。降ってきたのぅ。そちの申した通りじゃな」   冷えると古傷が痛む、とぼやきながらも、漢中王は降雪が好きであるらしい。  天府の王宮の書房に座して、披見していた竹簡を卓へ置くと立ち上がり、足取りもかろく廊へと寄る。   きょうの降雪は、王の掌中の珠である軍師が昨夜すでに予...